2012年1月4日
新春政治座談会 「3・11」後の日本の針路
出席者
自民党前政調会長 石破 茂
政治評論家 長野 ●也
世界日報主筆(社長) 木下 義昭
(司会・黒木正博編集局長)
(敬称略)
東日本大震災に伴う大津波、原発事故に続き、こうしたわが国の国難を見透かすかのように周辺国の挑発活動が活発化している。これにわが国はどう対処し、また、東アジアの平和と安定にどう貢献すべきか。憲法を軸に外交と安全保障の課題について、石破茂自民党前政調会長(衆議院議員)、政治評論家の長野●也氏と本紙主筆(社長)の木下義昭が語り合った。
●=示へんに右
憲法改正し国家主権明確に
党派超え国難に対処せよ
右から政治評論家の長野●也氏、石破茂自民党前政調会長、木下義昭本紙主筆、黒木正博編集局長=衆院第2議員会館
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――「3・11」という未曽有の大災害が起き、それが国民の心理に大きな影響を与えている。国の柱となる憲法についても、国民は大きな関心を持つようになってきた。国会で憲法審査会がようやく始動したが、今、憲法改正の審議が急がれる必要性、意義について、まずお話しいただきたい。
石破 3・11大震災、大津波、原発事故に象徴される昨年は、この国そのものの持続可能性、つまり、この国は本当に大丈夫なのかということを多くの国民が感じた戦後初めての年だったような気がする。3・11に際して、国家非常事態が宣言されなかったことが極めて象徴的だった。それは日本国憲法にその国家非常(緊急)事態の条項がないからだ。国民の権利や自由を守ってくれるのは国家しかなく、その国家そのものが危機に瀕した時に、その事態を打開するため、その目的に限って国民に義務を課し国民の権利を一定期間制限する条項がどの国の憲法にも当然ある。それが日本国憲法にはない。
もう一つは、自衛隊は今回の大震災による出動で多大な貢献をしたが、その自衛隊の規定も憲法にはないことだ。自衛隊すなわち軍は、警察と違い、国家の独立を守ることが責務だ。国の独立を維持するための非常事態条項や軍の条項がないということは、国家主権という概念が欠落しているということになる。
今年、独立回復60年を迎えるが、本来であれば国家が独立した時に憲法は主権国家にふさわしいものにすべきだった。それを怠っていたことが、日本人から国家という概念をだんだん失わせていったのではないか。そうであればこそ国家主権を明確にした憲法改正を急がなければならない。
長野 東日本大震災という未曽有の事態を受けて、その後の政治の対応ぶりに多くの国民は大変なもどかしさを覚えた。政治家のリーダーシップもさることながら、こうした事態に迅速にかつ包括的な対策を打ち出す体制になっていないことが復興の遅さ、原発事故の深刻さにつながった。石破議員のご指摘のように非常事態の規定を備えていない現行憲法の欠陥が、戦後政治の危機管理に対する緊張感と対処能力の欠如をもたらしてしまったのではないか。その意味で国家・国民の安全を確保する前提をしっかりと構築していくことが重要で、国民の認識、自覚がこれまでになく高まった今ほど憲法改正の必要性を訴える時はない。
木下 非常事態、緊急事態に対する条項を憲法の中に、一つの章を設けて入れておくべきで、詳細はそれを補足する法律を作ればいい。今までは自衛隊に関して第9条に多くの時間を費やして議論されてきたが、国民の中には平和憲法を守るというグループもある。しかし、自然災害、天災ひとつを見ても、あなたの命、あなたの家族の命、また子々孫々がいつどうなるか分かりませんよということになってしまうのだから、真剣に憲法改正にまで踏み込まないとこの国を守れない、ということを表しているのではないかと思う。
――民主党政権の改憲姿勢についてはどうか。
長野 民主党は、大震災の教訓をくみ取れず、復旧・復興策に追われている。それは最低限当然の責務としてやるべきことなのだ。だが、国民生活を守る最大の施策を中長期的に確保しなければ、大災害や緊急事態の時にまた同じ失敗を繰り返すことになる。国家緊急事態対処法の制定に向けてイニシアチブを発揮すべきだ。自民党の憲法改正推進本部では、「非常事態」に関する文言を憲法に盛り込み、細部については緊急事態法を制定する考えであり、政権政党がそれをやらないでは怠慢のそしりを免れない。
石破 わが党は、惨敗した総選挙後の平成22年に新綱領を定めた。もともとわが党は独立主権国家にふさわしい憲法を作ろうという政党だったが、新綱領の中にも新たな憲法を制定することを明記している。
他方、民主党には綱領がない。そのことを追及されたら、「綱領はないが、それに代わる基本的理念がある」と言ったので、憲法について何が書いてあるか読んでみると、「憲法の精神を国民生活にさらに生かす」と書いてあるだけで改正については何も書いていなかった。要するに、問題意識がないわけだ。平和主義、基本的人権、主権在民の三つを尊重していくということだけで、現行憲法の問題点は認識していない。
「主権侵害」には厳しい抗議を 自民猛省し立党の原点に還れ
国家主権の概念欠落の民主 石破
改正要件は過半数の発議に 木下
憲法審査会で96条の議論を 長野
石破 茂(いしば・しげる)
昭和32年、鳥取県生まれ。慶應大法卒。61年、衆議院議員初当選。農林水産総括政務次官、防衛庁長官(国務大臣)、防衛大臣、農林水産大臣、党政務調査会長などを歴任。平成23年10月から党安全保障調査会会長を務める。20年には、党総裁選に出馬した。当選8回。
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木下 自民党が結党した1955年の時の政綱には非常にいいことが書いてある。「平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う」とあるが、自民党がこの通りにしてくればよかった。それをしなかった怠慢によって、いま野党になっているのではないか。もちろん、憲法改正をすべきだとはっきり言うメディアも少なかったので、メディアの責任もあると思う。
さらに、政綱は「世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、集団安全保障体制の下、国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える」と明確に書いてある。これをきちっとしておけば、こんなに弱い日本には成り下がっていなかったのではなかろうか。野党は今こそ、震災の後片付けをするのと同時に、憲法を改正しなければいけないんだという議論をすべきである。そうしたら、与党になれると私は思う。
長野 中曽根元首相が憲法改正の歌を、独立回復後まもない昭和31年に発表したが、あれを今見直してみると、今の時代にもそのまま生きていると思う。
石破 われわれは小学校の時から、国民主権を叩き込まれている。しかし、国家主権という言葉を一度も聞いたことがなかった。では、国家主権を因数分解すると何なのか。領土、国民、統治機構の三つだ。しかし、民主党政権において、竹島、尖閣、北方領土にしても対応は極めて鈍く、拉致問題でも北朝鮮から国民をどうやって救い出すかの展望が全くない。だからこそ国家主権をきちんと体現する憲法が必要だと思うが、そこがわが党と民主党との違いだ。
――憲法に盛り込む内容の優先順位についてはどうか。
石破 まずは国家非常事態に対処するための規定だ。国民の生命、財産、自由、権利を守るのは国家しかないのであって、それ故に急ぐべきだと思う。ただ、国会議員3分の2以上の発議というハードルが高過ぎるので、まず2分の1に下げるべきという意見が党内にはある。その上でさらに国民投票を行わなければならないのだから、普通の法律改正とはわけが違い簡単にできるものではなく、硬性憲法という性格は損なわれないということで、96条の改正を急ぐべきという意見だ。私はそれは傾聴に値する議論だと思っていてその行動にも参加をしている。
その手続きの規定と併せていろいろな論がある。例えば一昨年、中国の副主席が来日して陛下が御引見になるならないが問題となり、「では陛下の国事行為とは何か」ということが議論になった。あるいは憲法そのものを改正しなくても法律改正で足りる部分もあるので、ひょっとしたら96条の方を急ぐのかなという気がする。
木下 私も、96条は国民投票もあるので過半数にすべきだと思う。憲法を全くいじってはいけないというのは日本ぐらいだろう。例えば、第二次世界大戦が終わった1945年以降、米国は6回改正している。カナダが16回、フランスが27回、ドイツは57回、イタリアが15回、オーストラリアが3回、中国も9回改めている。自分の国を良くするために時流に合わせてどんどん直したらいい。人間の体と同じで、死ぬまで完全な健康体であるはずがない。従って、与野党がこぞっていいものをつくるために過半数の発議にすべきだ。中道からレフトの人たちでも都合が悪くなったら勢力を強くして変えればいいのだから。
長野 憲法を「不磨の大典」として、一度も改正を行わずにきた大きな原因は、お二方ご指摘のとおり「衆参両院の各3分の2以上の賛成」という厳しい改正要件の存在だった。これに対し、民主、自民両党などの有志議員が「両院の過半数」に緩和するための「憲法96条改正を目指す議員連盟」をつくり、賛同者が200人を超えるなど大きな広がりを見せている。
憲法の各論でいきなり対立するのではなく、改正を妨げていた要件の緩和を行ったうえで、具体的な論議に入っていこうという現実的な動きと言える。設置から4年以上経てメンバー構成が行われ、ようやく始動が可能となった衆参両院の憲法審査会でもこの課題に取り組んでほしい。中身としては、いろいろな災害やテロを含めて非常大権を与えるということが大事なのだろうなと思う。
石破 そこで議論しなければならないのは、誰がその国家緊急権を持つのかということだ。大震災の時、菅総理が宣言していたらどうだったか。そこで皆が恐怖に駆られる。といって現行憲法下で、陛下にお願いするわけにもいかない。簡単に内閣総理大臣ということでいいかどうか、ここは考えなければいけないところだ。
――関連して外交・安全保障の問題だが、わが国として何が求められているか。
木下 義昭
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木下 3・11後、ロシア、韓国、中国の閣僚その他の主だった人たちが、日本の領土である北方領土、竹島、尖閣周辺に堂々と入ってきている。日本の大震災の被災者を慰めてくれるというポーズを取りながら、私たちの主権のある島々に入って来ている。日本を侮辱する行為である。私どもマスコミに責任があるが、もっとマスコミはちゃんと主張しなければいけないし、それ以上に政府がきつく抗議をすべきだ。とても外交・安全保障をできるような状態ではない。
もし冷戦状況下で大震災が起きたら、統治能力のない日本の政府に対して外国政府が、例えば原発対策では大変なことになるといけないから自分たちが代わりに統治してあげようとか、日本国内のそれに賛同するグループが来てほしいと言ったので来たとかという形での新しい“占領”があってもおかしくはない。そういう恐ろしさを感じる期間だった。
長野 いまの話は、強い国となり強い発信をしなければなめられるし、外交も軽視されるということだ。その意味では野田首相は本来、保守の人で期待をしていたんだが、素人の外務大臣とか、自らを素人と言う防衛大臣、あるいは外務省と全く信頼関係を築けなかった元大臣が外務委員長に就任したりと、野田首相は外交・安全保障を真剣に考えているのかね、という疑問を持たざるを得ない。
石破 こんな人たちに政権を担当させた私どもの責任が大きい。鳩山、菅政権はあまりにひどすぎたのだが、野田首相は保守の人でわれわれもシンパシーを共有するところもある。ただ、野田首相がそうであったとしても民主党政権では国家統治の経験も知識もないことに加えて、外交・安全保障に対する意識が低い。2年も政権を担当してなおこの程度かということだ。
北朝鮮の金正日総書記が死去した際の対応は何なのか。重大発表があるとの情報を聞いていながら総理は街頭演説に行こうとし、国家公安委員長兼拉致担当大臣という二重の意味でこの問題に大変な責任を持つ人が、自分の選挙区に、平日であるにもかかわらず政務で帰っていた。放送があって6分後に初めて知り、そして慌てて官邸に帰ったら安保会議は終わっていた。政治家本人の意識の低さもさることながら、官僚も官僚として果たすべきことを果たしてないとしか思えない。政府崩壊状態になりつつあって、そういう状況であることは外国は皆、見ている。これがいかに恐ろしいことか。
長野 内閣調査室(内調)などの政府の情報機関がそう判断したということは、今の政権に見切りをつけているという一つの証左だろう。それは政治主導の名の下で、こういう安全保障にかかわる国家の機密情報がいままで民主党政権でなおざりにされてきたのではないか。
木下 このことは国民にとっても恐怖である。安全保障会議をいいかげんな形でやってしまった。大地震の時にはすぐに安全保障会議を開くべきだったのに開かなかった。そして、3・11の翌日は菅さん本人のスタンドプレーで、ヘリコプターに乗って出掛けていった。はっきり言ってマンガの世界に入ってしまっている。地震のときも、今回、北朝鮮の後継者がどうなっていくかというように情勢が急変しているときにも、全く危機感がないということを国民は分かり始めている。
官僚機構も見切りをつけてあのような結果になっている。山岡国家公安委員長が官僚からよく教えてもらわなかったなどというのはお笑いだ。こういう政権は早く代わるべきだ。
――一方で、現実の問題としては中国の軍事的進出による東アジアの不安定要因が増している。それもわが国の危機感につながっている。民主党政権でこの対応が後手後手になっているのではないか。
石破 中国が、経済発展に伴って国防費を増やすということ自体をとがめるつもりはない。留意点は、中国が海洋進出とサイバー、宇宙の三つに非常に力点を置き始めたということだ。ワリャーグという空母を改造して運用試験に入っていると言うが、国防白書には空母についてどこにも記述がなく、意図が全く不明で透明性が低いことが気になる。もう一つは、文民統制が利いていないのではないかとの懸念がある。人民解放軍の行動のすべてが党中央にきちんと伝達された上でのことだったのかどうか。もともと軍事委員会にはシビリアンは二人しかいないことに加えて、党が掌握していないのかもしれないという二重の恐ろしさがある。
その意味でわが国にとって、この地域の軍事バランスをどうやって維持するかが課題だ。中東情勢を考えれば、米国が中東から引いてまでアジア・太平洋にシフトするわけではなく、相対的に地域における米国のプレゼンスが落ちていく可能性がある。そうすると、そこを韓国、日本、オーストラリアなどでどのように埋めていくかという話をしなければならない。その時に、「私は素人だ」といって全く恥じない防衛大臣がいるということも、もっと国民は危機感を持ってとらえるべきではないか。
長野 ●也(ながの・すけなり)
昭和14年、鹿児島県生まれ。中大法卒後、議員秘書、鹿児島県議会議員を経て55年、衆議院議員初当選。以来3期連続当選。62年、竹下内閣の厚生政務次官。平成元年、宇野、海部両内閣で自治政務次官。8年政界引退し政治評論活動。現在「ラジオ日本」パーソナリティー。
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長野 中国は20年以上も前年比連続2ケタの伸び率で軍事費を投入している。昔の地上軍を主体とした防御型から海空軍力の近代化を進め、特に昨年は本格的な空母ワリャーグが試験航行に入った。実戦段階には至っていないといっても、今後この地域で大きな脅威となる。資源や領土争奪で周辺諸国とも大きな摩擦を生じている。わが国も、今から対応しなければ間に合わない。力の空白が生ずると、それを埋めようと進出し紛争が起きるというのが古今東西の歴史だ。
特に、日本は資源や食料など外国から輸入する通商国家が宿命であり、シーレーン(海上交通路)の安全確保が死活的となる。離島防衛やシーレーン防衛に比重を置くとともに、削減一方の陸上自衛隊はむしろ増員が必要だ。
木下 中国の海軍の増強ぶりは大きい。ワリャーグは今年、実質配備されるだろう。中国軍は、宇宙と海洋進出を考えている。中国はもともと、再建期、躍進前期、躍進後期、完成期の4期に区切っており、今後は躍進後期に入って小笠原やグアムなどへ領域を広げていくだろうし、最終的にはハワイまで収めるべきだと考えている。そうであるので、軍事的な意味においては日本はそれに対応できる軍事力と外交努力を重ねていかないと、いくらGDP(国内総生産)で第二位と第三位が逆転してしまったといっても、国を守るためには軍事、外交政策をきちっと打ち出していける日本の政府でなければいけない。今の政府は戦略戦術もなく弱体だ。
――中国、朝鮮半島情勢が緊迫化する一方で、日米関係が普天間基地問題以降、ぎくしゃくしている。今後どう対応していくべきか。
衆院の解散総選挙は6月か 長野
政府は戦略戦術もなく弱体 木下
ごく短期の連立は否定せず 石破
石破 民主党の普天間基地問題の後始末をどうしたらいいのかと考えると、頭を抱えたくなる。自民、公明政権時代に行った2006年の日米合意をもう一度やると言っているわけだが、それはムリだと思う。当時から状況は変わっているので、そのままの合意では難しいだろう。
実は、民主党政権として「国外、最低でも県外」と言ったことを誰も取り消していない。日米合意に戻ったと言いながら、「県外、国外」発言は誤りでしたと玄葉外相が言ったら、鳩山(由紀夫)元首相が怒って総理がとりなした。玄葉さんは正しいことを言ったのに、なお誤りを認めず、菅さんも野田さんも誠意を持って沖縄の理解を求める努力をせず、いかにして取り繕うかということばかりやっている。その取り繕いが破綻する日が間違いなく今年、来るだろう。米国がグアム移転の予算を付けなかったということが序章であろう。沖縄も、なし崩しで日米合意に戻ろうとする彼らの偽りを許さないだろう。
――自民党としてはどう修復に向け具体策を取るのか。
石破 われわれとしては、2006年の日米合意に何を加えるかを考えねばならない。米国の海兵隊に任せている役割・任務のうち、日本でできることは分担すべきだ。海兵隊には自国民救出と島嶼防衛と真っ先に駆けつけて空港、港湾、補給地を確保するという三つのミッションがある。そのうち、三番目は専守防衛の自衛隊にはできないが、自衛隊が当然やるべき自国民救出と島嶼防衛まで、今は米国にやってもらっている。
日本でできることは何なのか。沖縄の負担はいろいろあるが、根源は他国の軍隊がそこにいるということだ。そこを日本の自衛隊が代替するということは考えていかねばならないのではないか。辺野古に移設するといっても、米国海兵隊辺野古基地ということではなく、日本国自衛隊辺野古基地として管理は自衛隊がやり、そこにゲストとして米海兵隊がいるという設定も現行法上、可能なわけだ。「日米合意通り」だけでは事は前進しないということをよく認識すべきだと思うし、われわれとしてもこうすべきだということを提示し、われわれが政権を担った場合にこれをやるのだということを言う責任が自民党にはあると思う。
米商業衛星が捉えた、試験航行する旧ソ連製の空母を改修した中国初の空母ワリャーグ(AFP=時事)
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長野 普天間問題を解決するのは、自民党が政権に戻ることだ。民主党の政権の下ではムリだと思う。普天間基地問題では日米同盟関係が損なわれている。米議会も態度を硬化させて沖縄海兵隊のグアム移転のための予算を凍結させている。日本側がボールをどう投げ返すかが問われている。政府が決意を示して決着を図らなければ事態は悪化する。特に中国やロシア、北朝鮮の動向が緊迫化している折、日米関係に齟齬が生じるのは極めて危険だ。米国に従属するな、といった現実を無視した独り善がりな論に惑わされることなく、日本がどう生き延びていくのか、それが政治の責任ではないか。予算措置を講じなくても日米関係を深化させるポイントの一つは集団的自衛権の行使を認めないとする政府解釈(これは内閣法制局の解釈)を改めて行使を認めることだ。これだけでも米国は日本の自覚を是とするだろう。
木下 それは内閣法制局長官にもう少ししっかりしてもらわないと。よく話せば解決する問題だろう。
それから、ここ十数年の歴代の沖縄県知事といろいろな話をしてきたが、野田政権の外務大臣にしても防衛大臣にしても、全然心からのお詫びをしていない。ただ行って、言葉も姿勢もポーズをとっているだけだ。仲井真弘多知事の顔を見ても、本人は何にも感じていない。これでは沖縄県民の心を揺るがすことはできない。
長野先生の見解と同じく、民主党政権では普天間問題を解決できないところに来てしまっている。これは野党の自民党がきちっと政権を獲って解決する以外に日米の良い関係をつくることは難しい。そもそも民主党の中に、日本と米国と中国は正三角形の関係だなどと言う議員がいるが、一体どこの国と同盟を結び、どこの国と同盟がないのかという基本的な知識すらない民主党政権では、危機的状況にある。
石破 那覇防衛局長がとんでもない発言をしたが、本来、謝りに行くのは政治家のはずだ。私が防衛副大臣の時、沖縄で自衛官が女性を暴行したことがあった。私は次の日に沖縄に行って、知事、議長、事件が起きた地の村長に平身低頭「申し訳ございません」と言って、ひたすら許しを乞うた。しかし、今回、「事務方が起こした不祥事だから事務方の長である事務次官が行くのが当然である」などと言って事務次官を行かせた。
木下 政治主導に全くなっていない。
石破 そう。政治家は責任を取るためにいるんだから。都合のいい時だけ政治主導と言って、責任は取ってくれない、現場に押し付ける。これでは官僚は動かない。個人的な恨みがあるわけではないが、民主党では統治ができない一つの象徴だったと思っている。
――こういう危機的状況の中で、一つに結集するような政治勢力が出てこないといけないのではないか。
石破 ねじれというのは今に始まったことではない。福田、麻生両政権では両首相に対する問責は出たが、閣僚に対する問責は一度も出なかった。問題があれば閣僚更迭も辞さなかったからだ。しかし、今の民主党政権では問責を受けても何が悪いということで二人は平然と職務を続け、総理は適材適所と今なお言っている。ねじれだからだめなんだと弁明していないか。そこは政権運営の稚拙さがあるのだろう。
ごく短期の連立も可能性としては否定しない。しかし、それは国難を救うという一種の緊急避難であり解散を前提としたごく短期のものでなければいけない。なおかつ政権の側から頭を低くしてこの問題のメドをつけるまで――例えば通常国会中とか――本当に自民党の知恵と力を貸してほしい、そうしたら必ず解散する、というようなことであるべきだし、政策協議は当然向こうの側から言ってくるべきだ。内閣は国会に連帯して責任を負うのだから。政策協議をしない連立は野合以外の何ものでもない。
平成22年度の緊急発進の対象となった飛行パターン例
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長野 私は民主党を総括すると、鳩山さんと菅さんが創業したがこの2年間、二人で創業者利益を食ってしまったと思っている。鳩山さんは夢を語ったが、普天間問題のように悪夢だった。逆説的に言うと財源を含めて夢を語ったから政権を獲れた。菅さんは自分の政権維持のために反小沢というキャッチフレーズで方針を決めて内向きの政治しかできなかった。
大修館書店が中高生から募集した国語辞典に載せたい新語にあるという「鳩る」は無責任、「菅る」は居座るという意味らしい。その二人に比べると、野田さんは重心も低いしまともだと思うが、難問山積だ。私は、TPP(環太平洋連携協定)とか消費税の問題に取り組むのなら、中曽根元首相が市場開放に取り組んだように、竹下登元首相が消費税に取り組んだ時のような発信の気迫がないといけない。昨年の世相を表す4文字熟語の「年々歳々」をもじって、毎年宰相が代わることを皮肉って「年々宰々」というのがあるが、野田さんもそうなりかねない。
衆議院の解散は、6月にあると思う。野田首相にとっては宿願の消費税が上がることになるし、困るのは小沢(一郎元代表)さんなので、野田さんにとってはプラスだと思う。自民党の谷垣禎一総裁にしてみれば、9月の総裁選の前に解散に追い込めなければ、次は石破さんや他の意欲のある人が出てくるだろう。解散・総選挙に追い込んでおけば自民党の議席が増えるのは間違いないし、ひょっとしたら政権奪還のチャンスもある。それとキーマンになる公明党が都議選、参院選とダブって衆院選とトリプルになると困るということがある。私は6月の選挙は三者にとって悪くはないと思っている。
――大阪のダブル選挙で、橋下徹氏が独裁者と言われながら圧勝した。これを見ると、政治のリーダーシップをいかに国民が求めているかということの裏返しだと思う。その意味で、危機管理を主軸とした政界再編があり得るのではないか。
石破 私は、前から政界再編論者だ。ただ、それは政治家の都合で行われてはならない。政党はあくまでも何かを実現するための手段だ。何か目的を実現するために同士相集い、構成されるのが政党である。政界再編は起こさねばならないが、その中軸は自由民主党でなければならない。民主党は何を目指すのか曖昧模糊としているので、数はいま、向こうが多いという問題ではない。何を目指すか、その下に結集をする、そういう意味での政界再編は行われるべきだ。
そこにおいて冒頭の話に戻れば、国家は非常に危機的な状況にあって、私は2年ほど前からこの国は危機管理モードにあると言ってきた。危機に対処できる内閣を組織しなければならない、と言い続けてきた。日本に残された時間はあまりないし、政策の選択肢もそう広いわけではない。私は本会議で、「今ならまだ間に合う。今を逃すと間に合わない」と強調した。今年ならまだ間に合う、来年ではもう間に合わないと思うので、長野先生が今年6月に総選挙があると言われたことを信じてやりたい。ただ、こちらがやりたいと思うときは、向こうはやりたくないのだろう。
大阪ダブル選挙の現象は、民主党もダメ、自民党もダメということが世論だったとすれば、自民党は何をする党かをもっとクリアに高く掲げて国民に信を問う度胸を持つべきである。
長野 いま、自民党の支持者の方が物分かりがいい。TPPとか消費税をやるべきだとの考えが多い。ところが、自民党の最大派閥はいま、落選組で、この人たちは民主党と違うことを言わないといけないと言っている。しかし、石破さんの政策ラインが生かされてくると自民党が再生するし、日本も良くなる。
木下 民主党がこれだけだらしないのだが、今年、総選挙があるのかどうか。その可能性は高くなってくると思うが、かといって自民党が圧倒的に勝つとも予測し難い。自民党にはたくさん人材がいるのだろうが、党の体制はそういう布陣になっていない。そうであるので、いま野党だが党の体制をしっかりと整えて、国民のために大義について粛々と協力するところは協力していくという姿をきちんと出していけば、予想以上に勝てるかもしれない。
これだけの大震災に遭ったにもかかわらず、日本国民は自然を恨むのではなく、自然と共に立ち上がっていこう、これには何かの意味があるんだということで忍耐強く立ち上がっていることが世界に大きな感動を与えている。国民が、特に被災者の方々が頑張っているので、それ以上に政治家が与野党を超えて国民の生命と財産を守る、国家の主権を守るという姿勢を打ち出していけば、日本は世界に冠たる日本として再び蘇っていくのではないか。
――本日は貴重なご意見ありがとうございました。